特集

RSウイルス感染症の症状・原因・治療法は?子どもも大人も注意

RSウイルス感染症の症状・原因・治療法

RSウイルス感染症は子どもを中心にしばしば流行する感染症ですが、大人もかかる可能性があります。この記事では、RSウイルス感染症への対処方法や保育園・幼稚園への登園可否、大人がかかるとどうなるかなどについて解説します。高齢者や心疾患・肺疾患のある訪問看護の利用者さんや、ご自身・ご家族の健康管理のためにも確認しておきましょう。

RSウイルス感染症とは

RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染によって引き起こされる呼吸器感染症です。生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼすべての子どもが罹患するとされています。症状や原因、感染経路、重症化リスクなどについて詳しく見ていきましょう。

症状

RSウイルスに感染してから2〜8日後に発熱や鼻水などの症状が現れます。初めて感染した乳幼児の約3割と、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患や心疾患のある高齢者の場合は、咳が悪化して喘鳴が生じ、呼吸困難になることもあります。細気管支炎、肺炎へと進む恐れもあるため、経過を慎重に見ることが重要です。

原因

RSウイルス感染症の原因は、その名のとおりRSウイルスの感染です。RSウイルスは世界中に存在するウイルスで、都市部において流行を繰り返すことがあります。流行は2〜5ヵ月ほど続き、日本では主に11~1月に流行します。

感染経路

RSウイルス感染症は、飛沫感染・接触感染します。子どもがいる家庭では、ドアノブや手すり、おもちゃなどを介して感染する可能性があります。なお、空気感染するとの報告はありません。

重症化リスク

特に生後数週間〜数ヵ月の間にRSウイルス感染症にかかると細気管支炎や肺炎に進展しやすいため、より入念な感染予防対策が必要です。その他も含め、重症化リスクが高まる要因は以下のとおりです。

  • 生後6ヵ月未満の新生児および乳児
  • 早産、低出生体重の新生児および乳児
  • 先天性心疾患
  • 慢性肺疾患
  • ダウン症
  • 免疫不全症 
  • 高齢者(特に慢性呼吸器疾患や心疾患等の基礎疾患を持つ場合)
    など

従来、RSウイルス感染症に予防接種はなし

2023年9月、国内で初めてRSウイルス感染症ワクチン(60歳以上対象)の製造販売が承認されましたが、従来はRSウイルス感染症にはワクチンがなく、予防接種は行われてきませんでした。ただし、モノクローナル抗体製剤であるパリビズマブをRSウイルス感染症の流行初期に投与を開始し、流行期においても1ヵ月ごとに筋肉注射することで、重症化リスクを抑制できます。対象となるのは、以下に該当する方です。

  • 妊娠28週以下で生まれた生後12ヵ月以内の新生児および乳児
  • 妊娠29~35週で生まれた生後6ヵ月以内の新生児および乳児
  • 過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた2歳以下の子ども
  • 血行動態に異常のある先天性心疾患を持つ2歳以下の子ども
  • 免疫不全がある2歳以下の子ども
  • ダウン症候群がある2歳以下の子ども

RSウイルスにかかった際の対処法

RSウイルス感染症に罹患した場合の治療法、自宅療養などについて詳しく見ていきましょう。

対症療法を行う

RSウイルス感染症には特効薬が存在しません。基本的には対症療法ですが、呼吸症状が重度の場合は酸素投与や痰の吸引、呼吸管理が必要になる場合があります。 気管支拡張剤とステロイドの効果については、一定の見解が得られておらず、使用にあたっては慎重な判断が求められます。

自宅で療養する

RSウイルス感染症では、発熱による発汗や不感蒸泄の増加、食欲低下などにより体内の水分が失われやすくなります。体内の水分が不足すると、痰の粘稠度が上がるために痰の喀出が困難となり、息苦しさや呼吸困難感が増す可能性があります。特に乳幼児や高齢者は脱水傾向になりやすいため、療養期間中はこまめな水分補給を心がけるようにしましょう。

また、喘息をはじめとした呼吸器疾患がある場合は、RSウイルス感染症に罹患すると症状が悪化したり、肺炎を合併したりする可能性があります。RSウイルス感染症の疑いがある場合は、軽い症状であっても早めに医療機関を受診しましょう。

RSウイルスにかかった際の登園は?

RSウイルス感染症にかかった際の保育園・幼稚園において、出席停止に関する取り決めはありません。適切な休養期間を確保しつつ、感染拡大を防ぐための対策を講じることが大切です。

感染拡大防止策と休養期間

休養期間については、かかりつけ医に相談することが大切です。症状がある間は感染を広げる恐れがあるため、保育園・幼稚園は休んだほうがよいでしょう。

厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)では、「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」1が登園の目安としています。また、感染拡大を防ぐために、咳が出ている子どもにはマスクの着用を促すほか、咳エチケットや手洗いの勧奨、流行期における乳児との接触制限などが重要とされています。

RSウイルス感染症の再発について

RSウイルス感染症は再感染のリスクがあります。成人では再感染が少ない傾向がありますが、子どもの場合は症状が落ち着いてから2〜3週間で再感染する場合もあるといわれています。マスクの着用や手洗い、子どもが使用するおもちゃや触れた場所の消毒などを徹底しましょう。

* * *

RSウイルス感染症は、風邪のような症状が現れ、比較的軽度で済むことが多い感染症です。しかし、乳幼児の約3割や高齢者では重症化する可能性があるため、状態に応じて早めに医療機関を受診しましょう。今回、解説した内容を自身やご家族の体調管理、利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。

編集・執筆:加藤 良大
監修:豊田 早苗

医師 豊田 早苗
とよだクリニック院長

鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。
2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

【引用】
1)厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」,p.61.(2021(令和 3)年 8 月一部改訂)
https://www.mhlw.go.jp/content/001005138.pdf
2024/5/29閲覧

【参考】
〇厚生労働省「RSウイルス感染症Q&A(令和5年7月14日一部改訂)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html
2024/5/29閲覧

この記事を閲覧した方にオススメ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら